昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
会社の昼休み、休憩室まで歩いていると、自販機の前に月野と朱里がいるのが見えた。
何も話してはいないようだが、空気が重苦しい。
葉月が近づける空気ではなかったため、月野と朱里に気づかれないように目線を下にやり、足早に歩いた。
しかし、こちらに気づいた朱里が「あ、葉月」と葉月に向かって呼びかけた。
話しかけないでくれと思いつつも、振り返らないわけにもいかず、葉月は月野と朱里の方を仕方なく振り返る。
「あ、はい」
「さっきはありがとう。急だったのに手伝ってくれて。葉月のおかげで課長に怒られずに済んだよ。お礼に何か飲む?」朱里は自販機を指差して言った。
「え、いいですよ。悪いですし」
「これくらい遠慮しないでよ。今度ちゃんとしたお礼もするからさ。とりあえずはこれで」
「わかりました。でも、お礼は本当に飲み物だけでいいですから」
朱里はそれを聞くと、自販機に多めのお金を入れた。
「じゃあ、遠慮なく」
葉月は昼間の眠気を覚ますため、コーヒーを選び、自販機のボタンを押した。
ふと朱里の隣にいる月野を見ると、何やら落ち着かない様子に見える。
何かあったのだろうか。気になるけど、今は聞けない雰囲気だ。
葉月は自販機の缶コーヒーを取り出した。
「じゃあ家にある残りの荷物、適当に持って行っといて。鍵渡しとくから」月野はそれ以上何も言わず、朱里に鍵だけ渡すと、すぐにどこかへ行ってしまった。
なぜ月野が朱里に鍵を?
家にある荷物って?
と葉月は状況が見えずに、混乱した。
朱里を見ると、渡された鍵を呆然と眺めているようだった。
「朱里さん、さっきのは一体……」葉月は恐る恐る朱里に訊いた。
「ああ、ごめんね。ちょっと訳があって」朱里は真ん中で分けてある綺麗な前髪をかきあげて言った。
「実は、今の彼氏と付き合う半年前に、月野と同棲してたんだ」
「えっ?」葉月は驚きのあまり、声が裏返った。
それであんなに重苦しい空気が流れていたのかと葉月はようやく納得した。
「ふふ。めっちゃ驚いてる」
「そりゃ驚きますよ。同棲してたってことは、付き合ってたんですか?」
「そうだよ。あれ、葉月にまだ教えてなかったっけ?」
「教えてもらってないですよ。でも半年前ってことは、私が入社する前ってことですよね」葉月は頭の中を整理しながら朱里に訊いた。
「そう言うことになるね」
朱里は買っていた缶の紅茶を開けて飲んだ。
「何で別れちゃったんですか?」
「あいつの浮気が原因」
「浮気━━」
葉月はちょうど、今日の朝テレビでやっていた報道を思い出した。そして聞かない方がよかったかもしれないと思い、心配しながら朱里の方を見た。
朱里は思ったよりも悲しそうではなかったが、どことなく不機嫌そうだ。
「このこと、会社の人には誰にも言わないでね」
「もちろんです」
こんな身近にも浮気で傷ついた人がいたのかと思うと、葉月は胸が痛んだ。
月野は思ったよりも不誠実な男だったようだ。今までは相談に乗ってくれるいい人だと言うイメージだったのに。
しかしそれは葉月の思い違いだったと言うことを知り、内心かなりショックだった。
葉月は月野に裏切られた気持ちになりながらお昼を過ごした。
☆
何も話してはいないようだが、空気が重苦しい。
葉月が近づける空気ではなかったため、月野と朱里に気づかれないように目線を下にやり、足早に歩いた。
しかし、こちらに気づいた朱里が「あ、葉月」と葉月に向かって呼びかけた。
話しかけないでくれと思いつつも、振り返らないわけにもいかず、葉月は月野と朱里の方を仕方なく振り返る。
「あ、はい」
「さっきはありがとう。急だったのに手伝ってくれて。葉月のおかげで課長に怒られずに済んだよ。お礼に何か飲む?」朱里は自販機を指差して言った。
「え、いいですよ。悪いですし」
「これくらい遠慮しないでよ。今度ちゃんとしたお礼もするからさ。とりあえずはこれで」
「わかりました。でも、お礼は本当に飲み物だけでいいですから」
朱里はそれを聞くと、自販機に多めのお金を入れた。
「じゃあ、遠慮なく」
葉月は昼間の眠気を覚ますため、コーヒーを選び、自販機のボタンを押した。
ふと朱里の隣にいる月野を見ると、何やら落ち着かない様子に見える。
何かあったのだろうか。気になるけど、今は聞けない雰囲気だ。
葉月は自販機の缶コーヒーを取り出した。
「じゃあ家にある残りの荷物、適当に持って行っといて。鍵渡しとくから」月野はそれ以上何も言わず、朱里に鍵だけ渡すと、すぐにどこかへ行ってしまった。
なぜ月野が朱里に鍵を?
家にある荷物って?
と葉月は状況が見えずに、混乱した。
朱里を見ると、渡された鍵を呆然と眺めているようだった。
「朱里さん、さっきのは一体……」葉月は恐る恐る朱里に訊いた。
「ああ、ごめんね。ちょっと訳があって」朱里は真ん中で分けてある綺麗な前髪をかきあげて言った。
「実は、今の彼氏と付き合う半年前に、月野と同棲してたんだ」
「えっ?」葉月は驚きのあまり、声が裏返った。
それであんなに重苦しい空気が流れていたのかと葉月はようやく納得した。
「ふふ。めっちゃ驚いてる」
「そりゃ驚きますよ。同棲してたってことは、付き合ってたんですか?」
「そうだよ。あれ、葉月にまだ教えてなかったっけ?」
「教えてもらってないですよ。でも半年前ってことは、私が入社する前ってことですよね」葉月は頭の中を整理しながら朱里に訊いた。
「そう言うことになるね」
朱里は買っていた缶の紅茶を開けて飲んだ。
「何で別れちゃったんですか?」
「あいつの浮気が原因」
「浮気━━」
葉月はちょうど、今日の朝テレビでやっていた報道を思い出した。そして聞かない方がよかったかもしれないと思い、心配しながら朱里の方を見た。
朱里は思ったよりも悲しそうではなかったが、どことなく不機嫌そうだ。
「このこと、会社の人には誰にも言わないでね」
「もちろんです」
こんな身近にも浮気で傷ついた人がいたのかと思うと、葉月は胸が痛んだ。
月野は思ったよりも不誠実な男だったようだ。今までは相談に乗ってくれるいい人だと言うイメージだったのに。
しかしそれは葉月の思い違いだったと言うことを知り、内心かなりショックだった。
葉月は月野に裏切られた気持ちになりながらお昼を過ごした。
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