昔飼ってた犬がイケメン男子高校生になって会いにきた話
残業が終わり、葉月は朱里より先に帰らせてもらえることになった。
腕を伸ばし解放感に浸りながら外に出ると、噂の彼はまた前と同じ場所に立っていた。
少し離れた場所でも、彼はやはり整った綺麗な顔をしていることが見てわかった。
あれから二時間は経つと言うのに、よくずっと同じ場所で待っていられるな。きっと彼好みの人がいなかったのかもしれない。
でも、仮にそうだとしたら、早々に見切りをつけて、ナンパをする場所を変えると言う手もあったのではないか。
そうしなかったと言うことは、何か他にここで待つ理由があると言うことなのだろうか。
いろいろ考えを巡らせたが、彼に関わるのも面倒なため、葉月は見なかったことにしてその場を立ち去ろうとした。
その瞬間、彼を見つけたことに動揺したのか、葉月は足元にあった段差に気づかず、足を踏み外した。
「うわっ」
運悪く地面に着地した時に右足首を捻り、葉月は前に倒れた。
「いったあ……」
「大丈夫ですか?」
彼はすぐに葉月の近くに来た。
「だ、大丈夫。これくらい平気だよ。心配しないで」
葉月はすぐに立ち上がろうとしたが、右足首に激痛が走って立ち上がることができなかった。
「無理に動かしたら駄目ですよ」
こんな状況にもかかわらず、彼は冷静に片膝を立ててしゃがみ、葉月の右足の状態を見始めた。
今日の葉月の服装は、スカートとベージュのストッキングと言う組み合わせだったため、すぐに足の状態が見れた。
「腫れてますね……」
「このくらい本当に大丈夫だから、気にしないで」
葉月はまた立ち上がろうとすると、痛くて右足を動かすことすらできなかった。
彼は制服のジャケットから素早くスマートフォンを取り出すと、「ちょっと今から近くの病院探しますね」と言って、真剣な顔で病院を探し始めた。
間もなくして、「近くにまだ診療中の病院がありました。今すぐそこに行きましょう」と彼が言った。
戸惑っている葉月を余所に、「失礼します」と言って、彼は葉月を軽々とお姫様抱っこした。
「ええっ、ちょっと待って」
葉月が言うことを気にも留めず、彼は病院に向かって進んだ。
どうしよう。この状況を会社の人に見られていたらとても恥ずかしい。
でもそんなことより、体重いとか思われていないだろうか。
心配になった葉月は彼に訊いてみることにした。
「あの、私大丈夫? 重くない?」
「全然、むしろ軽いですよ。だから気にしないでください」
実際、彼は余裕そうに見えた。
葉月はお姫様抱っこをされながらも、彼のその堂々とした態度と素早く無駄のない対応に驚嘆した。
最初彼に出会った時は、ただのナンパをしてくる軽薄な男なのかと思っていたけど、案外そうでもないのかもしれない。
病院に到着して診察をしてもらっている間、彼は待合室で葉月のことを待っていた。
「軽い捻挫ですね。しばらく安静にしてください」と診察を終えた先生が葉月に向かって言った。
その後、患部を冷やしたり、テーピングを巻いたり、いろいろ処置をしてもらった。
全ての処置が終わると、葉月は立ち上がって歩けるようになり、自分の足で待合室に戻った。
会計を済ませると、彼は歩きづらい葉月を補助してくれたため、葉月は問題なく病院の外に出ることができた。
「あの、さっきはここまで連れて来てくれてありがとう。本当に助かった。それで、何かお礼がしたいんだけど」
「別にお礼なんていいです」
「でも……」
「本当に大丈夫ですから」
このままでは埒が明かないと思った葉月は、ひとまず話題を変えることにした。
「あ、そう言えば、さっき会社の前で誰かを待ってたんじゃないの? ここまで来て大丈夫だったのかな?」
「いや、誰かって言うか、俺が待ってたのはあなただけです。この前だって、あなたと友達になりたいって言いましたよね。声をかけたのは誰でもよかったわけじゃないです。あなただから友達になりたかったんです」
彼の顔は真剣そのものだった。
「━━私だから?」
「俺、あれからいろいろ考えたんですけど、やっぱり諦められません。しつこいかもしれないですけど、お願いします。友達になってください」
彼は深々とお辞儀をした。
「あの、だから何で私なの?」
「それはまだ言えません」
「何で?」
「何でもです」
理由を答えない彼に、葉月はもどかしさを感じた。
そんなのずるい。気になって仕方ないじゃないか。
しかし彼が答えないと言うのだから、これ以上追求するわけにもいかない。
とうとう観念した葉月は小さく息をつきながら、
「もう、そこまで言うならわかったよ」と言った。
「本当ですか? よかったー」
彼は安心したように笑っていた。
本当に物好きな人だ。一体自分の何が気に入ったと言うんだろう。
でも、彼と友達になることで助けてもらったお礼ができるなら好都合だ。
葉月と彼は連絡先を交換して帰路についた。
☆
腕を伸ばし解放感に浸りながら外に出ると、噂の彼はまた前と同じ場所に立っていた。
少し離れた場所でも、彼はやはり整った綺麗な顔をしていることが見てわかった。
あれから二時間は経つと言うのに、よくずっと同じ場所で待っていられるな。きっと彼好みの人がいなかったのかもしれない。
でも、仮にそうだとしたら、早々に見切りをつけて、ナンパをする場所を変えると言う手もあったのではないか。
そうしなかったと言うことは、何か他にここで待つ理由があると言うことなのだろうか。
いろいろ考えを巡らせたが、彼に関わるのも面倒なため、葉月は見なかったことにしてその場を立ち去ろうとした。
その瞬間、彼を見つけたことに動揺したのか、葉月は足元にあった段差に気づかず、足を踏み外した。
「うわっ」
運悪く地面に着地した時に右足首を捻り、葉月は前に倒れた。
「いったあ……」
「大丈夫ですか?」
彼はすぐに葉月の近くに来た。
「だ、大丈夫。これくらい平気だよ。心配しないで」
葉月はすぐに立ち上がろうとしたが、右足首に激痛が走って立ち上がることができなかった。
「無理に動かしたら駄目ですよ」
こんな状況にもかかわらず、彼は冷静に片膝を立ててしゃがみ、葉月の右足の状態を見始めた。
今日の葉月の服装は、スカートとベージュのストッキングと言う組み合わせだったため、すぐに足の状態が見れた。
「腫れてますね……」
「このくらい本当に大丈夫だから、気にしないで」
葉月はまた立ち上がろうとすると、痛くて右足を動かすことすらできなかった。
彼は制服のジャケットから素早くスマートフォンを取り出すと、「ちょっと今から近くの病院探しますね」と言って、真剣な顔で病院を探し始めた。
間もなくして、「近くにまだ診療中の病院がありました。今すぐそこに行きましょう」と彼が言った。
戸惑っている葉月を余所に、「失礼します」と言って、彼は葉月を軽々とお姫様抱っこした。
「ええっ、ちょっと待って」
葉月が言うことを気にも留めず、彼は病院に向かって進んだ。
どうしよう。この状況を会社の人に見られていたらとても恥ずかしい。
でもそんなことより、体重いとか思われていないだろうか。
心配になった葉月は彼に訊いてみることにした。
「あの、私大丈夫? 重くない?」
「全然、むしろ軽いですよ。だから気にしないでください」
実際、彼は余裕そうに見えた。
葉月はお姫様抱っこをされながらも、彼のその堂々とした態度と素早く無駄のない対応に驚嘆した。
最初彼に出会った時は、ただのナンパをしてくる軽薄な男なのかと思っていたけど、案外そうでもないのかもしれない。
病院に到着して診察をしてもらっている間、彼は待合室で葉月のことを待っていた。
「軽い捻挫ですね。しばらく安静にしてください」と診察を終えた先生が葉月に向かって言った。
その後、患部を冷やしたり、テーピングを巻いたり、いろいろ処置をしてもらった。
全ての処置が終わると、葉月は立ち上がって歩けるようになり、自分の足で待合室に戻った。
会計を済ませると、彼は歩きづらい葉月を補助してくれたため、葉月は問題なく病院の外に出ることができた。
「あの、さっきはここまで連れて来てくれてありがとう。本当に助かった。それで、何かお礼がしたいんだけど」
「別にお礼なんていいです」
「でも……」
「本当に大丈夫ですから」
このままでは埒が明かないと思った葉月は、ひとまず話題を変えることにした。
「あ、そう言えば、さっき会社の前で誰かを待ってたんじゃないの? ここまで来て大丈夫だったのかな?」
「いや、誰かって言うか、俺が待ってたのはあなただけです。この前だって、あなたと友達になりたいって言いましたよね。声をかけたのは誰でもよかったわけじゃないです。あなただから友達になりたかったんです」
彼の顔は真剣そのものだった。
「━━私だから?」
「俺、あれからいろいろ考えたんですけど、やっぱり諦められません。しつこいかもしれないですけど、お願いします。友達になってください」
彼は深々とお辞儀をした。
「あの、だから何で私なの?」
「それはまだ言えません」
「何で?」
「何でもです」
理由を答えない彼に、葉月はもどかしさを感じた。
そんなのずるい。気になって仕方ないじゃないか。
しかし彼が答えないと言うのだから、これ以上追求するわけにもいかない。
とうとう観念した葉月は小さく息をつきながら、
「もう、そこまで言うならわかったよ」と言った。
「本当ですか? よかったー」
彼は安心したように笑っていた。
本当に物好きな人だ。一体自分の何が気に入ったと言うんだろう。
でも、彼と友達になることで助けてもらったお礼ができるなら好都合だ。
葉月と彼は連絡先を交換して帰路についた。
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