和菓子が繋ぐラグジュアリー。

 しかし、これは今日で終わらなかった。
それからも度々社長宛に配達を頼まれる。
 和菓子好きなのもあるが、何故か毎回私が担当に。

「じゃあこれをまた、華京院様にお願いね」

「あの……また私にですか?」

「えぇ……華京院様自らご指名よ。良かったわね。
気に入られたみたいで」

 ニコニコしながら女将さんが言ってくる。
気に入られたと言うか婚約者のふりとしてでは?
 しかし……そうなると。

「あの……今日は、盛岡さんに練りきりのコツを
教えてもらう予定でして」

「あーそれなら明日でもいいぞ?
 別の注文も作らないといけないし、行って来い」

そ、そんな……!!
 大ベテランの先輩・盛岡さんに教えてもらうはずが
何故だか行って来いと言われてしまった。
 本来なら和菓子職人としてまだまだ経験を積まないといけない。

 しかし、ここの先輩や女将さんは、やたらに
私に配達の方をやらせたがる。
 確かに華京院様は、ここの創立者だし常連客だが。
本当にそれでいいのだろうか?

まだ未熟だし、それに……それに。
思い出しただけでも身体が火照りそうだ。

「さぁ支度をしてらっしゃい」

女将さんは、そう言うと奥に押し込まれてしまう。
 ご、強引な……。
だが逆らえないので仕方がないので私は、
着物に着替えて身支度をする。

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