和菓子が繋ぐラグジュアリー。
華京院様は、私のことをどう思っているのだろう?
無下に扱ってはいないし、今だと何だか優しい。
そう思うと胸がギュッと締め付けられそうになった。
どうしたら“特別”になれるのだろうか?
婚約者のふりではなくて……。
いつの間にか華京院様の特別になりたい自分が居た。
もしかして私……華京院様のことを好きになっているのかもしれない。
少しずつ芽生えた恋心。
しかし“ふり”をしている以上は、私は、それ以上でもそれ以外でもない。
その宙ぶらりんの関係が悲しかった……。
そんな中途半端な関係が続いたある日。
女将さんは、別の配達の仕事を私に任せてきた。
「これを敷地内にある総合病院の名誉院長先生まで
届けてほしいのよ」
「わ、私がですか!?」
いつもながら、どうして私なのだろう?
こういう偉い方の配達なら女将さんの方がいいのでは?失礼があったらいけないし。
しかし女将さんは、否定を許さないぐらいの笑顔で
「よろしくね」と言ってきた。
その迫力に意見することは出来なかった。
どうしよう……自信ないよ。
自信がなくても行かないといけなくなり
私は、渋々に着物を着て総合病院に向かった。
ベリーヒルズビレッジにある総合病院は、外科や
産婦人科など複数の科がある病院なのだが
セキュリティーやサービスがホテル並みに豪華で有名だ。
芸能人も御用達で、病院食も豪華で全室個室だそうだ。
確かに豪華な病院なだけはあって、凄く大きい。
これは、緊張しない方が無理な気がする。
オフィスビルに入るのも最近ちょっと慣れただけで
未だに緊張するのに……。
私は、何度も深呼吸をすると中に入っていく。
うわぁ~さすが設備が良くて広い。
総合案内のところで尋ねると連絡をしてもらい
名誉院長室まで案内してもらった。
「し、失礼します。如月から来ました蓮見花恋です。
お茶菓子をお届けに参りました」