和菓子が繋ぐラグジュアリー。

「悪いが彼女は、連れて帰る。
 この人は、俺の婚約者なんでな」

「……婚約者!?」

 恵斗さん達は、驚いていた。だが、しかし
華京院様は、言うだけ言うとやや強引に店の外まで連れ出されてしまった。

 そして、そのまま手を繋いだまま歩き出した。
痛いし、歩くのも速い……。
 これは、かなり怒っていると分かった。

ど、どうしよう……よく分からない内に怒らしてしまったわ。
何とかして謝って許してもらわないと。
 だが途中で足が躓いてそのまま転んでしまう。

……痛い。
 よく見ると草履の鼻緒が取れていた。
躓いた時にでも取れたのだろう。ショックだ……。
すると華京院様が我に返ったのか真っ青になり慌てていた。

「す、すまない……怒っていて急かしてしまった。
大丈夫か?怪我はしてないか?」

「ちょっと擦りむきましたが大丈夫です。
それより……鼻緒が……」

これは、直さない限り履くのは無理だろう。
 するとそれを見た華京院様は、余計に真っ青になる。

「なんてことだ。大切な鼻緒が……本当にすまない。
ちょっと待っていろ。今すぐに呉服屋に行き
新しい草履とこれを修理に出すから」

「えっ……?大丈夫……」

 そう言い終わる前に華京院様は、慌てて
近くにある呉服屋まで走って行ってしまった。速い……。
 取り残される私。すると驚きから笑いが込み上げてきた。
何かしら……あれ。華京院様らしくないわね。

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