和菓子が繋ぐラグジュアリー。

 「あらあら。そんなところで何を騒いでいるの?
蓮さんもようこそいらっしゃいました」

 祖母は、ニコッと微笑むと私達に、こちらに来るようにと言ってきた。
 すると恥ずかしくなったのか華京院様と亜蘭は、
ピタッと喧嘩するのを止めた。さすがお祖母様だわ。

私は、さぁさぁと気を取り直して華京院様を客間に案内した。
何十畳もある広い客間に連れて行くとすでに両親が
座って待っていた。

「遅くなりました。花恋さんと結婚前提で
お付き合いさせて頂いている華京院蓮です」

普段と違い丁重に頭を下げて挨拶する華京院様。
両親は、正座した状態だが丁重に頭を下げた。

「わざわざご挨拶をありがとうございます。
はじめまして父の蓮見稔(はすみみのる)です」

「母の(らん)でございます」

 両親も自己紹介をすると祖母は、ニコッと微笑みながら
座るように手招きをしてきた。
 私と華京院様、そして亜蘭も座る。
しばらくすると雪子さんがお茶を持ってきた。
 もちろん我が家流で点てた抹茶だ。

「今回は、遅くなりましたが花恋さんとの
結婚の承諾を貰いたくこちらに来ました。
ぜひ私の妻として結婚させて下さい」

 華京院様は、私の両親に頭を下げて結婚の申し込みを
お願いしてくれた。
 その言葉に私は、感動した。嬉しい……。
両親もお互いに顔を見合わせると微笑んでいた。

 しかし父が何かを言おうとした瞬間だった。
何だがバタバタと廊下が騒がしい。何かしら?
 そう思った瞬間拍子の戸が思いっきり開いた。

「ちょっとその結婚待って下さい!」

息を切らしながらそう言ってきた人物は、
イトコの伊吹(いぶき)だった。
伊吹は、華道・朝比奈流の長男で次期跡継ぎ。
家元の伯父様の息子だ。

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