和菓子が繋ぐラグジュアリー。
女将さんも意外と押しが強いよう気がした。
結局。断る術もないので、そのままやることになってしまった。
その日、何も無いまま終わった。しかし
それから3日後。厨房でベテランの先輩に指導をしてもらないながら
あんこ作りをしていると女将さんが厨房に入ってきた。
「花恋ちゃんご指名よ。また華京院様のところに
茶菓子を持って行って頂戴な」
「か、華京院様のところにですか!?」
何故女将さんではなく私に?
しかし婚約者のことをハッと思い出した。
そうだった……婚約者のふりをしないといけないのだった。
もしかしたらそれに関する呼び出しかもしれない。
だとしたら嫌だ……行きたくない。
あそこに行くのも緊張するのに、婚約者としてだ。
ミスも許されないし、何を言われるかも分からない。
「あの……でもあんこ作りの仕込みの途中ですし」
「それなら俺がやっておくから行って来いよ!
あそこの社長は、怒らすと怖いぞ?」
えぇっ……!?
親切な先輩の手助けは、大変助かるのだが
今は、遠慮したいのに……。
だが言われた以上は、従うことしか出来ない。
私は、しゅんと落ち込みながら身支度をした。
また女将さんの若い頃の着物を借りた。
頻繁にあるなら自分の着物を置いておいた方がいいかしら?
いやいや。そんなに頻繁にあっても困るわね。
何とかして断らないと……。
そう思いながら茶菓子を包むと店から出た。
そして隣にあるオフィスビルに向かうと
この前と同じようにエレベーターに乗り社長室に。
今度は、スムーズに行けた。
中に入ると何故だか待ってましたと構えていた。
あ、あの……?