医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…
窓を叩く雨音は 少しも 弱くならないまま。
私達は 部屋に 閉じ込められていた。
フロントからの 電話が鳴ったのは 昼近く。
『はい。わかりました。ありがとうございます。』
電話を取った 圭介は 一瞬 笑顔を見せる。
「涼子。あと10分で タクシー来るって。行こう。」
「ホント?よかった…」
私達は ボストンバッグを手に 部屋を出た。
チェックアウトが済んで まもなく
エントランスに タクシーが滑り込む。
「すみません。こんな天気の中。」
「いいえ。ゆっくり行きますので。」
「やっぱり 飛行機は 欠航しているんですかねぇ?」
「ええ。でも 少し 風が 静かになったから。午後は 飛ぶかもしれないですよ。」
圭介と 運転手の会話を 遠くに感じながら
私は 大きく揺れる 外の景色を 見ていた。
圭介とは 別れよう…
今日 東京に戻れたら。
圭介の奥さんにも 京一にも
知られないうちに 止めよう。
私が 京一を裏切ったことは 消えないけど。
一生 京一に 隠し続けることが
私に与えられた 罰だから。
もう二度と こんなことは しない…
京一のことを どれほど好きか
私は 嫌というほど わかったから。