医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…
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「案外 元気そうね?」
駅まで 迎えに来た母が 私を見て言う。
「元気って 言ったじゃない。どうして?」
「ううん。涼子は 何かないと 帰って来ないから。」
「京一さんが 出張で 退屈なの。」
「相変わらず 京一さんは 忙しいの?」
「うん。帰りは 毎日 遅いし。休みも 病院から 呼び出されたりして。全然 休んだ気がしないわ。」
「お医者様って 大変ね。」
母が 運転する車の中 ポツポツ話す。
「涼子も 最近 色々な所に 載っているわね?」
「へぇ。お母さんでも 気付いた?」
「隣の 美波ちゃんが 涼子の載った雑誌 見せてくれるのよ。」
「へぇ。美波ちゃんか。大きくなったでしょう?」
「高校3年生よ。涼子に 憧れているんだって。」
「フフフッ。嬉しいこと 言ってくれるじゃない。」
「おかげで 涼子の姿 見れるから。元気なのが わかって 安心するわ。」
「あら。私 心配かけてる?」
「別に 心配は してないけどね。涼子は 前から そうだったから。」
「そうって?」
「何でも 自分で決めて 親の言うことなんて きかなかったじゃない?」
「そうかしら…?」
「そうよ。大学も モデルになることも 京一さんと 結婚することだって。全部 相談じゃなくて 報告だったわ。」
「本当ね…私って 自立心が旺盛なのね。」
確かに 私は 何でも 自分で決めていたけど。
母は ちゃんと 私を見ていてくれた。
今日だって 突然来た私を 母は心配している。
私は 急に 熱いものが 込み上げて
涙が出そうになる。
だから 母に 会いたくなかったんだ…
1人でいることも 嫌だけど。
母の顔を見たら 心が弱くなりそうで。