医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…

例年より早く 梅雨が明けて 

夏らしい太陽が 強く輝く 7月の半ば。


私は 元気な男の子を 出産した。



陣痛が始まってから 産まれるまで

京一は ずっと私の側に 居てくれた。


「京一さん…絶対に 足元には 行かないで…」

苦しくて 意識が朦朧とする中

分娩台に乗ると 私は 京一に言った。


「大丈夫だよ。ずっと 涼子の顔 見てるから。」

「だって…京一さん 慣れてるから…無謀なこと しそうなんだもん…」


助産婦さんは 私達の会話に 笑って言う。

「ホント。村上先生なら やりかねない。大丈夫よ 奥さん。私が 見張ってるからね。」


京一が 苦笑していたことも 

何度も 私の汗を 拭ってくれたことも


看護士さんに聞くまで

私の記憶には 全く残っていなかったけど。


生まれた子供は 京一にそっくりで。

赤ちゃんなのに 端正な顔立ちを していた。


「涼子 ありがとう…お疲れ様。」

甲高い 泣き声を上げる 子供を 抱き締めて。

京一は 何度も 私に お礼を言ってくれた。


幸せな 賑わいの 分娩室で

やっと 親になったばかりの 私達。


これからの苦労を 思いながらも

ひと時の 満足感に 包まれて。


出産の苦しみからの 解放

親としての 日々の始まり


不安、恐怖、責任…


負の感情は たくさんあるけど。

私達は もう大丈夫だと思う。


2人で 力を合わせることが できるから。

この子は きっと幸せに 育つ…








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