医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…

京一の 勤務先に 入院していることを いいことに

京一は 暇を見つけては 私の病室に 来ていた。


出産翌日から 母子同室になった 赤ちゃんは

よく泣いて 私を 休ませてくれないけど。


「涼子。名前なんだけど。 ” 景 ” ってどう?」

仕事中なのに 病室に来て 赤ちゃんを抱き上げる 京一。


「景ちゃん?可愛いね。いいんじゃない?」

「俺の名前と 涼子の名前に  ” 京 ” が入っているから。どうしても  ” 京 ” の字を 使いたかったんだ。」

満足そうに 微笑む京一に 私も 笑顔になる。


「京一さん ずっと考えていたの?」

「うん。実は 産まれる前から。景なら 男の子でも 女の子でも 大丈夫だから。それに 景っていう字には 光とか大きいとか 良い意味が あるんだよ。」


「へぇ。京の上に 日が乗っているのね。景ちゃんは きっと 私達を 超えるわ。」


私が 早速 景ちゃんと呼ぶと 

京一は 嬉しそうな 笑顔になった。


「景ちゃん…景ちゃん。お腹空いたのかな?」


小さな景を抱く 京一の掌は 大きくて。

この掌に 任せておけば 全部が 上手くいく。


「パパ。新生児室から ミルクを貰ってきて。」

「えッ。ヤダよ。俺 景ちゃんを 抱いているから。涼子 貰ってきて。」


「もう…!じゃ その間に 景ちゃんの オムツ お願いね。」

「はいはい。ママ 早く行って来て。」


始まったばかりの 親子3人での生活。

退院してからは 少し不安だったけど。


私は きっと 大丈夫。

もう 迷ったり 間違ったりしない…






 

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