ハルカカナタ
「ほんとにごめんな・・」

「気持ち悪い!吐き気がする!こんなの・・誰にも言えない!」

 ハルカの言葉は思っていた以上に痛くて、辛くて、思わずうずくまってしまいたくなる。

 でも、それは出来なくて、僕に出来るのは傷付けてしまったハルカの心を受け止めてやる事だけ。

 どんな嫌われても、拒否されても、全て受け止める。

 今はただ、ハルカの気がすむまで

「・・どうするの、どうしたらいいかわかんないよ、カナタ・・・」

 ハルカは僕の胸に頭を預け、肩を震わせながら呟いた。

 その震えを止めてやる事も、肩を抱いてやる事も僕には出来ない。

 時折り漏れる嗚咽だけが今の僕の世界の全てだった。

「学校、辞めるよ、それでどっか遠くに行って、もう2度とハルカの前には顔出さない」

 誰も望まない結末

 全てが壊れてしまったから

 僕が壊してしまったから

 そうする事でしか

 終われない

「イヤだよ!カナタがどっか行くなんて絶対イヤ!」

「でもこれ以上側には居られないだろ、僕はハルカを女として見てる、もう妹には見れないんだよ。正直に言えば自分でも気持ち悪いと思う、ハルカとキスしたいって思ってる自分が気持ち悪い、抱きしめたいって思ってる自分が気持ち悪い、ハルカの全部が欲しいって思ってる自分が気持ち悪い、でも、思っちゃうんだよ。止められない」

「だったら!」

 顔を上げて僕を見るハルカの目は真っ赤で、潤んでいて、ドキッとしてしまう程に強い眼差しだった。

「だったら側に居てよ!私も気持ち悪いって思う!血の繋がった実のお兄ちゃんを好きだって思ってる自分が気持ち悪い!キスして欲しいって思ってる自分が気持ち悪い!抱きしめて欲しいって思ってる自分が気持ち悪い!カナタに全部あげたいって思ってる自分が気持ち悪い!でも思っちゃうんだよ!どうしようなく思っちゃうの!」

「・・ハルカ?」

「ダメだって思った!こんなのはおかしいって思った!気持ち悪いって思った!でも・・だから!カナタの書いてる小説を読んだ時、凄く!凄く嬉しかった!カナタも私を好きなんだって思ったらどうしようもなく嬉しかったの!それからいっぱい泣いた、泣いて泣いて、この気持ちは誰にも言っちゃダメだって、言ったら一緒に居られなくなるって思った。我慢しようって決めた。だから、彼氏が出来たって嘘ついた」

「・・・」

 気付いていなかったわけじゃない。確信はなかったし、ハルカが彼氏が出来たなんて嘘をつく理由がわからなかった。

 だから僕は気付いてないフリをした。

「そうすれば、今のままで一緒に居られると思ってた。でも、カナタが綾と付き合ってるって聞いて、カナタが遠くに行っちゃうって、今のままで居られなくなるって思ったらもう我慢出来なかった」

 ハルカが僕と同じ気持ちだった事は飛び上がりたい程嬉しい、今すぐ抱きしめてキスしたい。

 でも、それが許されない事を僕は知っているから、抱きしめようと持ち上げた腕は力なく下ろすしかなかった。

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