ハルカカナタ
「おかえりカナタ」

「ああ、ただいまハルカ」

「大丈夫だった?」

 何が、とは言わないが【妹恋】の事だとわかるので、大丈夫とだけ答える。

「汗かいたからちょっとシャワー浴びて来る」

 バスルームのドアを開けながら僕が言うと、そそくさとハルカが後からついて来た。

『いやいや、なんでついて来るんだよ』

 花火から帰ったあの日の夜、シャワーを浴びようと思いバスルームに向かった僕の後を今と同じ様について来たハルカに言った。

『一緒に入る・・』

 視線を斜め下に落として言うハルカを僕は拒みきれなかった。

 それからはこうしてシャワーや風呂は一緒に入っている。

 僕が服を脱いでいる後ろで布が擦れる音がする。ハルカも服を脱いでいるのわかって、胸の鼓動が早くなっていく。

 先に脱ぎ終わった僕がバスルームに入ると、間を置かずにハルカが入って来てドアを閉めた。

 元々それ程広いバスルームではない、そもそもが2人で入る事を想定している広さではなく、触れてはいないが存在がそこにある事を認識出来るぐらいの距離しかない。

 蛇口を捻ると、シャワーヘッドから水が勢いよく飛び出す。少し待ってからお湯に変わったのを確認してから頭からシャワーを浴びる。

 そのタイミングで背中に形容のし難い柔らかい感触がして、ハルカの腕が伸びて来た。

「カナタ・・」

「っ!」

 ハルカの手が僕の敏感な場所を這う事で、背中の感触までも鋭敏になっていく。

 抗い難い情欲をそのままに、僕とハルカはシャワーもそこそこに上がりもつれるようにベッドに倒れ込む。

 僕の手に、身体に反応するハルカが気持ちの昂りを後押しされ、僕はさらに激しくハルカを求めた。

「また汗かいちゃったね」

 悪戯っぽく言ったハルカの表情に寂しさが混ざっているのがわかってしまい、僕は少し強目に抱き寄せる。

 あの日から身体を重ねて来た。愛おしいハルカの悦ぶ顔はどんな麻薬より甘美で、自制が効かない。

「ねぇ、カナタ、最後までしたい・・」

 それでも、超えてはいけない一線がそこにはあって、僕とハルカがそこを超える事はきっとない。

「もし、子供が出来たら間違い無く僕達の関係がバレる。父さん達にも・・ハルカと一緒に居られるなくなるのは僕には耐えられないよ・・」

「私もカナタと居られなくなるのは耐えられないよ、でも、やっぱりひとつになりたいよ・・」

「ごめんな、ハルカ・・」

「ううん、私こそ我儘言ってごめん・・カナタだって我慢してるんだもんね」

 身体と心のバランスを取るのは難しくて、でもどうしようもなくて、もどかしさだけが募っていく。






 

 

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