ハルカカナタ
【カナタへ

 すぐそこで寝てるカナタに手紙書いてるって笑えるね。

 まずは、勝手に居なくなってごめんね。

 許して欲しいなんて言わない。私はカナタに嘘をついた。ずっと一緒に居るってゆう嘘。

 嘘ついてごめんね。

 私がカナタをお兄ちゃんじゃなくて、男の子として好きなんだって気付いたのは中学生になってすぐだった。

 友達がカナタってカッコいいよねって言っててさ、その時はカナタがカッコいいって言われて、お兄ちゃんがカッコいいって言われて嬉しいなって思った。

 でも、彼女居るのって聞かれて、居ないよって言ったら紹介してって言われて、すごく嫌な気持ちになったの。

 それでも仲が良いお兄ちゃんだから取られるのが嫌なだけだって思ってたけど、だんだんカナタと居たらドキドキするようになって、それまでは何とも思わなかったような事で心臓が飛び跳ねて。

 意識しちゃったらもう止まらなくて、ドキドキもどんどん酷くなって、カナタが他の女の子と楽しそうに話してるの見たら泣きそうになって。

 でも兄妹なんだからダメだって、こんなの普通じゃないって、カナタに気付かれたら嫌われるって思った。

 一緒にはなれないってわかってたけど、それでもカナタの側に居たくていっぱい我慢したんだよ?

 ホントにいっぱいいっぱいいっぱい我慢したの!

 なのに、大学に行って一緒に暮らし始めて少し経った頃『最近カナタよくノーパソでなんかしてるなぁ』って思って、チラッて覗いたらなんか書いてて、レポートかと思ったけどそんな話も聞いてなかったし、どうしても気になってカナタが寝てる時に見ちゃったの。

 そしたらあんなの書いててドキドキしながら読んで、物語なのに不思議だけど作り話なんかじゃ無くてカナタの気持ちなんだってすぐわかったよ。

 わかっちゃって、すごくすごく嬉しくてもう嬉し過ぎてどうにかなっちゃうんじゃないかってくらい嬉しくて、悶えて悶えて、こんなの見ちゃったら、カナタも同じ気持ちで居てくれたなんて思ったらもう我慢出来なくなるって思った。

 だから『彼氏が出来た』って嘘ついた。

 凄く辛かった、同じ気持ちで居ても伝えられない、好きだよって言えない、キスも出来ない。

 悲しくて悲しくて、でも泣いたらカナタにバレちゃうから泣けなくて。どうしても我慢出来なくなった時だけ『一樹さんが』ってカナタに泣きついてどうにか耐えてた。

 ごめんねカナタ。

 私が『一樹さんが』って言う度にカナタが辛そうにしてたの知ってた。知ってて私はカナタに甘えてたの、ごめんね。

 でも、そうでもしないと気持ちが溢れてカナタに『好きだよ』って『大好きだよ』って言っちゃいそうで怖かった。

 私に彼氏が居ればカナタから気持ちを伝えて来る事は絶対にないと思ったから、ああするしかなかったの。

 同じ気持ちなのに伝えられないのが凄く辛かったけど、同じ気持ちだってわかってたから我慢できた。


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