ハルカカナタ
 本当にギリギリだったけど、それでもどうにかバランスを取れてたの、薄氷の上を歩く?だっけ?

 まあ、とにかくそんな危ういバランスだった。

 なのに!

 カナタと綾が付き合ってるって聞いて、そんなわけないと思ったけど、カナタから直接付き合ってるって、綾が好きだって言われて全部私の勘違いだったんだって思った。

 そんな事になってようやくあの小説は作り話なんだって、普通に考えてそれが当たり前だって気付いて。

 元々ギリギリだったバランスが簡単に崩れた。カナタが綾に取られたのが我慢出来なくて、もう側に居られなくなるんだって思ったら私の側に居てよって言ってたの。

 それから少しして、綾から話があるからって駅の南側にある公園に呼ばれて行った。

 そこでカナタと別れたって聞いて、綾は私の気持ちに、カナタの事が好きだってゆう事に気付いてて引っ叩かれた。

 『中途半端な事しないで』って『私がどんなに望んでも手に入らないのに半端な事しないで』って言われた。

 ズルい事をしてるってわかってた。口では一緒にはなれないからって言って、彼氏が出来たなんて嘘ついてまで遠ざけておいて、カナタに彼女が出来るのは我慢出来ない。

 綾がね、泣いたの。私の目の前で泣いてた。本当にカナタの事が好きなんだってわかって、そんな綾を見てたらこんな中途半端な事してらたら綾に合わせる顔がないって思った。

 だからあの花火の日に(ホントはもっとロマンチックに花火が上がってるの観ながら言うつもりだったのに!)私はカナタに好きだって伝えようって決心した。

 伝えて、ほんの僅かな時間だけカナタと特別な時間を過ごして、それで気持ちに整理をつけようって決めたの。

 それが臆病な私の限界。

 これから先にあるカナタの人生全部を私の為に犠牲にしてなんて私には言えない。

 これから先、一生お母さんや、お父さんに嘘をつき続けるなんて私には出来ないよ。

 だからごめんね。

 我儘ばっかり言ってごめん

 嘘ついてごめん

 いっぱい辛い思いさせてごめん

 弱い私でごめんね。

 カナタと気持ちが通じあった時間、凄く凄く凄く凄く、言葉ではもどかしくて伝えられないけど、幸せだったよ。

 あの時間があるから私は幸せだって心から言えるよ。

 幸せだった、じゃなくて今も幸せだって言える。

 サヨナラ、大好きだよカナタ。

 だから、次に会う時は普通の兄妹として会おうね。

 またね、お兄ちゃん

             ハルカより 】


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