政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
整髪料でツンツンに立たせた短髪がトレードマーク。一見するとやんちゃそうに見えるが、二十九歳の年齢の割に落ち着いた性格の男である。
理仁は開いていた雑誌を閉じ、引き出しの一番下に大事に収納した。
「了解。ありがとう」
マウスを動かし、スリープ状態になっていたパソコンを起こす。パスワードを入力してから画面右上にある機密フォルダをクリックした。
「先月期も業績は好調です。日高社長が就任後は特に顕著ですね」
売上高も経常利益も前年同月比で百二十パーセント。戸田の言うように右肩上がりである。
「非常に喜ばしいが油断は禁物だ」
自分にも言い聞かせる。
企業経営が悪化するのは、たいていが慢心からくるもの。おごりはなによりも危険だ。
ミレーヌは理仁で四代目。代々父親から受け継ぎ、創業九十年を数える。