政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
その相乗効果はミレーヌの売上アップにも一役買っている。ほかのパティシエたちも彼女のケーキに触発され、全体的なレベルアップにも繋がった。
「近々店に出向くと伝えておいてもらえると助かる」
「承知いたしました」
戸田は会釈して踵を返したが、再びくるりと振り返った。
「ところで社長、佐々良菜摘さんはその後、ご旅行からお戻りになられましたか? 必要であれば捜索のプロに依頼することも可能ですが」
「いや、その必要はない」
もう間もなく戻るだろう。探す必要もない。見当違いの場所を探しても見つからないだろうから。
思わず浮かべた笑みに戸田が「どうかされましたか?」と反応する。
「いや、なんでもない」
手をひらりと振り軽く一蹴する。
「しかし社長も完璧主義でいらっしゃいますよね」
「なんの話をしてる?」