政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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菜摘が理仁の家に連れ去られた三日目。菜摘は用意された運転手付きの車で、和夫が入院する病院へやって来た。
大地に姿を変えたままのため、とても心許ない。和夫の病室があるフロアでヒヤヒヤしながら何人かの看護師とすれ違ったが、男装を疑うような好奇の目は向けられずホッとした。
(おじいちゃん、すぐに気づくかな)
さすがに和夫なら菜摘だとわかるだろうが、それでもなんとなくそわそわする。
四人部屋の引き戸を開け、窓際側の仕切りカーテンを静かに開けた。
「大地、来てくれたのか」
菜摘が顔を覗かせると和夫はニコニコと第一声を発したが、違和感を覚えたらしい。菜摘にじっと見入って目を真ん丸にした。
「菜摘!? いったいなんで」
ここが病室だというのも忘れて、和夫が驚いた声をあげる。
「やっぱり私ってわかる?」