政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「しかし菜摘と大地は本当にそっくりだな」
「メガネで誤魔化してるのも大きいと思うけどね」
「日高さんはまったく気づかず?」
「たぶん」
理仁の言葉の端々から、本当は菜摘だとわかっているのではないかとヒヤッとするときもあるが、この三日間はなんとか大地を演じられていると言っていい気がする。
気づいているのに嘘に乗る理由が、理仁にはないから。
「でも、おじいちゃん、ごめんね」
「なんで謝るんだ」
「農園のためを思えば、結婚に迷っている場合じゃないのに」
結婚すれば借金を肩代わりしてくれると言ってくれているのだ。理仁の本音を暴くなんて悠長に構えている時間はない。
「それを言うなら私の方だよ。かわいい孫に酷な決断をさせようとしているんだから。不甲斐なくて申し訳ない」
「そんなふうに言わないで」
不自由なく育ててもらったのだから、和夫の大事なものを守るのはあたり前。それにイチゴ農園は、菜摘にとっても大切なものに変わりない。