政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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その夜、美代子の手料理で夕食を終えた菜摘は、「少し付き合って」と理仁からお酒に誘われた。
今日は和夫の病院と農園で作業も少しあったため、できれば早くお風呂に入ってゆっくりしたいが、断るのを許してくれそうにない視線に負けてしまった。
照明をほどよく落としたリビングのソファに座り、理仁が準備してくるのを待つ。
理仁がつけたのか、テレビのニュースで台風が日本の南海上で発生したと伝えていた。
(そろそろ台風シーズンか……。まだこっちまでは来ないよね)
この時季はまだ関東への影響はないだろうが、ビニールハウスがあるため台風情報には敏感になる。昨年、上陸した台風にハウスを破壊されて大変な目に遭ったから余計だ。
しばらくして現れた彼はフルボトルのワインとグラスを手にしていた。
「大地くん、ワインは飲める?」
「少しなら」
アルコールは嫌いではないが強くはない。ワインはグラス一杯が限界だ。
注いでもらったグラスを手に取り、「いただきます」と言いつつ口をつける。ほのかにある酸味が邪魔にならず、フルーティーな香りが鼻から抜けていく。