政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
急に喉がカラカラに乾いた気がして、ワインをグラスの半分くらいまで一気に口に含む。少しずつ喉の奥に流し込むと、胸のあたりが燃えるように熱くなった。
「それで、お姉さんはなんて?」
「えっ? あ、そうですね……なんだったかな。わかったって言ってたと……思います、はい」
菜摘は前を向いたまま答えた。横顔に理仁の視線を感じるからたまらない。
(早いところワインを飲み干して、ここから退散しよう)
嘘がこれほど精神的につらいものだとは思いもしなかった。それもその場限りではなく、何日も続けなければならないのだから。
理仁と一緒にいるとハラハラして心臓にも悪い。
ところが、せっかく空にしてテーブルに置いたグラスに理仁がワインを追加で注ぐ。
「あ、お代わりは大丈夫です。そろそろ」
「そう言わずにもう少し付き合ってくれ」
遠慮がまるで通じない。理仁はそのグラスを菜摘に差し出してきた。〝受け取れ〟と言っている目に逆らえない。