政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「飲ませすぎたな。ごめん」
菜摘が勢いよくワインを飲んだため、理仁もつい調子に乗って彼女のグラスに注ぎ足した。酒に酔えば、自分から正体を明かすかもしれないと期待したのもある。
でも菜摘はなかなか意思が固く、そう簡単に崩せないタイプらしい。
「美代子さん、ひとつお願いがあるんだ」
理仁は立ち上がり、両手を前で組んで困惑する美代子に向きなおった。
「なんでございましょう」
「正体を知ったのは美代子さんだけにしておいてほしい」
美代子が目を瞬かせる。
「ですが、バスルームからここまで運んだのが私では無理がありませんか?」
「人一倍力持ちだと言えばいい」
理仁は、自分で自分の言葉にクスッと鼻を鳴らした。