政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「……大地じゃないってばれちゃったってこと?」


理仁がここへ運んだのなら、裸を見られたうえ正体までばれたことになる。


「やだ、どうしよう!」


確実に騙せていた自信はないが、少なくとも理仁は菜摘を大地として扱っていた。
もしかしたら嘘に激怒して、理仁は農園に差し伸べようとしていた手を引っ込めるかもしれない。そうしたら佐々良イチゴ農園は経営破綻。和夫はもちろん、菜摘も大切にしてきたものがなくなってしまう。――当然ながら理仁との結婚も。

最後に頭に浮かんだものが、やけに心に引っかかる。なぜか小さな影を落として気分が晴れない。

(と、とにかく、どんな状況になっているのかたしかめなくちゃ)

いったん気持ちを鎮め、菜摘はここ数日しているように大地に変装して恐る恐るダイニングに顔を出した。


「おはようございます」


キッチンには美代子がひとり。理仁の姿はまだ見えない。
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