政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「大地様、おはようございます」
(〝大地〟? それじゃ私をベッドまで運んだのはやっぱり日高さんなの?)
美代子が菜摘を〝大地〟と呼んだ理由はほかにない。そもそも彼女が菜摘を運べるわけがないから。
裸を見たのは理仁であってほしくないと願っていたため、愕然として顔面蒼白になった。足に力が入らず、その場にへたり込む。
「大丈夫ですか? まだお加減がお悪いようですね」
美代子は菜摘の腕を引き上げ、ダイニングチェアに座らせた。
「でも心配しないでください。理仁様にはばれておりません」
「えっ……?」
(それじゃ昨夜、バスルームから私を運んだのは美代子さん!?)
菜摘は目をパチパチと忙しなくまたたかせて彼女を見た。
「大地様に扮した菜摘様、なんですよね?」