政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「疑ってないです」
首を横に振りながら答えると、理仁は鋭い視線をふっとやわらげた。
「じゃ、あとはキミの気持ち次第ってわけだ」
理仁は口もとを少し緩ませ菜摘を見つめる。
「農園のことは心配しなくていい。キミを逃すつもりもない。だから観念して俺を好きになれ」
なんて上から目線。それなのに嫌な気分にならないのはなぜだろう。
華やかなオーラも余裕たっぷりの振る舞いも、理仁は初めて会ったときから変わらない。苦手なタイプだからなるべく離れていようと思っていたはずが、いつの間にかものすごく近い距離にいる。
ひとつひとつの言動に翻弄され、菜摘はどぎまぎさせられ通しだ。
「菜摘」
不意に呼び捨てにされ、鼓動が飛び跳ねる。それと同時に額にやわらかい感触を覚えた。