政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「とっくに俺を好きって?」
「そ、そうじゃなくて」
つい強く否定する。
「それは残念。でも菜摘、俺はもう遠慮しないから」
理仁はおどけたように笑ってから口角をニッと上げ、ハンガーにかけてある洋服を選び始めた。
「これからデートしよう」
「デート?」
「といっても夕方だから遠出というわけにもいかないけどね。気分を変えてディナーといこうか。菜摘が帰ってきたお祝いだ」
なんとなくウキウキしている理仁の横顔を見て心が容易くくすぐられる。
彼はすでにインディゴブルーのセットアップに着替えを済ませていた。リネン素材が涼しげで、ほどよくカジュアル。白いTシャツとの合わせがとてもいい。
びしっとしたスーツ姿も自宅でのラフな服装も、理仁がなんでもよく似合うのは類稀なる容姿のせいだろう。
「これなんかどう?」