政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
プールから上がったあと経緯を話して聞かせた美代子は、『よかったですね』ととても喜んでいた。彼女は菜摘とふたりきりになったときに『いつまで大地様のままで?』と何度となく確認してきたから、ようやくといった様子だった。
「早速デートといきたいところだけど、その前にちょっと付き合ってほしいところがあるんだ」
そういって理仁が菜摘を連れていったのは青山にあるミレーヌ本店だった。
建物は道路に面した壁がガラス張りになっており、黒を基調とした気品のある店構えだ。理仁によると、ホテルやデパートに出店している以外の店は基本的にみな同じ外観に統一しているという。
菜摘は現在のミレーヌしか知らないが、以前は街の片隅にひっそりとあるような佇まいだったらしい。理仁が専務に就任してからイメージを一新したそうだ。それが功を奏し、ミレーヌは今や大人気の有名店だ。
理仁が店内に入ると、社長の来店に気づいたスタッフが色めき立つ。外観同様に黒をメインカラーにしているため、シックで高級感がある。
五組のお客がカラフルなケーキの並ぶショーケースを覗きながら、どれにしようか悩んでいた。
菜摘自身も覗きにいきたい気持ちでいっぱいだが、邪魔にならないよう入り口付近で待つことにした。
「社長、お疲れ様です。今日は……?」