政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

女性は弾む声でそう言って、再び奥へ入っていった。

理仁が菜摘に振り返り、ショーケースに向かって右側の方を指差す。ミレーヌはカフェを併設している店舗もあり、青山店にもそのスペースがあった。
八つあるテーブルのうちふたつ空いている。理仁はそこへ座ろうというのだろう。
菜摘たちは一番手前のテーブルについた。


「ここ、大丈夫なんですか?」


なんの話をするのか菜摘にはわからないが、お客でない自分たちが席を占領してもいいものかと心配になる。なによりも、理仁のテリトリーに菜摘が一緒にいて平気なのだろうかというのが大きい。


「すぐに終わるよ。衛生的に厨房に入るわけにはいかないからね」


厳しく管理された場所には不用意に入れないのだろう。

数分後、先ほどのコック帽を被った女性がトレーにケーキを乗せて現れた。菜摘を見て怪訝そうな表情をする。社長が女性連れで現れれば、そんな顔になって当然かもしれない。

どう反応したらいいのかわからず、菜摘はとりあえず会釈して目線をテーブルに落とした。
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