政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「菜摘、こちらはうちのチーフパティシエの山崎エリカさん」


唐突に紹介され、エリカの目線が理仁から菜摘に向く。お互いに「初めまして」と挨拶を交わしたが、彼女は探りを入れるような視線だ。切れ長の目のせいか鋭さを感じさせる。


「まだ公にはしていないけど、こちらは俺のフィアンセの菜摘さん」
「えっ?」


菜摘とエリカの声が被る。揃って理仁を見た。

(婚約なんてまだなのに)

ハラハラしてからハッとする。〝まだ〟ってなに!と自分にツッコミを入れた。それじゃ確定みたいだ。
菜摘が密かに目を泳がせていると、エリカから戸惑う空気が漂ってくる。


「婚約? ……理仁く――社長、結婚するの?」


言いなおしたが、なぜか彼女は理仁を肩書きではなく名前で呼んだ。


「そうなんだ」
「や、やだ、そうだったの? 私知らなかった。教えてくれればよかったのに」
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