政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
鮮烈に意識した気持ち
翌日、菜摘が和夫の病室を訪れると、大地の顔もそこにあった。
「変装しなくてよくなったのか?」
ふたりの声が見事に重なる。ベッドに座っていた和夫も椅子でゆったりとしていた大地も、揃って目を丸くした。菜摘が〝菜摘のまま〟で現れたから驚いたようだ。
「うん、そうなの」
「なに、やっぱばれたのか」
大地がプハッと吹き出す。
プールでの経緯を思い出して、菜摘は苦笑いを浮かべた。じつは男に興味があるなんて嘘で暴かれるとは思いもしなかった。理仁の方が何枚も上手だったのだ。
「だよな。いつまでも変装に騙されるわけがないって」
「それがね、最初から私だってわかってたみたいなの」
壁に立てかけられていたパイプ椅子を出しながら、菜摘は情けない白状をした。大地と並んで座り、ふぅと息を吐き出す。