政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「それじゃ日高さんは、菜摘の嘘に付き合ってくれたのか」
「そうみたい」
今思い出しても恥ずかしい。低い声で話したりウィッグを被ったり、菜摘は大地を演じきれていると思っていた。
(……ときどき、あれ?って思うことはあったけどね)
理仁はすべてお見通しだったのだ。
「で、ねえちゃんはどうするつもり? あの人と結婚すんの?」
和夫と大地の目が菜摘に向けられる。
「日高さんが本気で結婚を考えているのはわかった」
生半可な気持ちで菜摘にプロポーズしたわけでないのは、この一週間と少しの間でしみじみと教えられた。
昨日だってそう。社員に婚約者として紹介したうえ、友人に菜摘を引き合わせたのだから、冗談でも軽い気持ちでもないだろう。
「じゃ、結婚を決めたってこと?」
「農園をこのままにはしておけないから」