政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
大地の質問にそう答えると、和夫の顔がにわかに曇る。
「農園のことは抜きにして、菜摘自身の気持ちはどうなんだい?」
「私? 私は……」
そう聞かれて、ふと考える。
この一週間、理仁の言動にドキドキさせられ、翻弄され通しなのは言うまでもない。さり気ない気遣いや優しさを見せられるたびに心が動かされ、あけすけに見せられる彼の好意にどぎまぎしている。
昨夜は昨夜で、彼の仕事上の仲間であるエリカに対して抱いたのは、嫉妬めいたものだと認めざるを得ないだろう。
(だから、嫌いじゃない。――ううん、好き)
たぶんそれを素直に認められなくて、農園を引き合いに出しているだけだ。
一年前に出会ったときは苦手だったはずなのに。
(ううん、それも違う。惹かれるのが怖かっただけ)
彼の溢れる魅力に抗おうと、必死に壁を作り自分を守っていたのだ。
「気が進まないのならいいんだぞ?」
「そうだよ、ねえちゃん。そんな深刻な顔になるくらい嫌なら、やめておいた方がいい」