政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
菜摘が押し黙ったままでいると、和夫は心配そうな顔で念押しし、大地は険しい顔をして詰め寄った。
「う、うん……」
ふたりがあまりに強い調子で逆の解釈をするものだから、菜摘は本音を言えずに〝好き〟の言葉を飲み込む。菜摘自身も自覚したばかりの恋心に戸惑っているため、胸を張ってふたりに反対意見を言えなかった。
「そうだ、菜摘。大事なことを言い忘れるところだったよ」
なにか思い出したのか、和夫がパチンと手を叩く。
「台風に備えた方がいいかもしれない」
日本の南海上で台風が発生したのは、菜摘もニュースで見たため知っている。
「でも、こっちまでは来ないでしょう?」
関東に進路をとるのは時期的にもう少し先だろう。