政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

農園に着いてすぐ、菜摘は大地と倉庫にしまっておいた台風対策資材を引っ張り出した。毎年それらを使って台風被害を軽減させているが、昨年の秋に台風が直撃したときには三棟のハウスが飛ばされ、潰される被害に遭っている。
手慣れた和夫がいないため、業者に依頼してしっかりした補強をするのが一番だろうが、借金を考えると難しい。


「念のため確認だけど、全部のハウスを補強するんだよな?」
「ひとつだけやったって意味ないじゃない」
「だよな」


大地は腰に手をあてて苦笑いだ。
佐々良イチゴ農園には八棟のハウスがあるから、その補強はたしかに相当な作業量。大地が苦笑する気持ちもわかる。


「じゃあ気合入れてやるか!」


鼓舞するように自分の両頬を叩き、大地が資材を手に取る。菜摘も「よし、やろう」とそれに続いた。
浮き上がり防止のためにパイプハウスの肩部分にワイヤーでアンカーを打ち、ハウスの両端のアーチ部分にタイバーという補強用のパイプを取りつけていく。
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