政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
母親譲りの色白な点は自分でも誇らしいが、それ以外に取り立ててチャームポイントはなく、肩より少し長い髪をした容姿は特別目を引くわけではない。
(そんな私にどうして……?)
菜摘はあまりにもびっくりしてなにも返せず、口を半開きにして彼を見つめる。
「キミは『佐々良イチゴ農園』を潰したい?」
「潰したいだなんてまさか」
今度は〝潰す〟ときた。どちらも突然すぎて話についていけない。
佐々良イチゴ農園は菜摘の祖父・和夫が大切にしている農園だが、その和夫は年を重ねて心臓を悪くして二週間前から入院中だ。
幼い頃に両親を亡くした菜摘は大地とともに祖父母のもとに引き取られ、二十七歳になった今も農園を営む和夫の家に暮らしている。祖母が五年前に亡くなり、現在は三人家族。それなのにいきなり……。
「どうしてそんな話になるんですか?」
「おじい様もキミたちには言えずにいたようだけど、ファインベリーの開発で佐々良イチゴ農園は多額の負債を背負っている」
目まぐるしく転換する話題が頭を混乱させる。結婚の次が潰す潰さないの話になったと思ったら、今度は借金だという。