政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「発売後に話題になって、出版社にたくさんの問い合わせがあったそうだよ。あのかわいい子はどこの誰だって」
その言葉には〝農作業をしている割に〟というニュアンスが含まれているのだろう。和夫がオーバーに言っているのだ。
「彼が社長になってからミレーヌは業績も絶好調のようだし、日高さんは精悍さが増して男ぶりが上がってる。年寄りの私から見てもいい青年だと思うよ」
見た目がいいのは菜摘だってわかっている。ミレーヌ主催のパーティーに和夫と招待されたときにも、女性陣の視線を彼がひとり占めしていた。いるだけで華があり、紳士的な仕草に見え隠れする色気から目を逸らせなくなる。
心を囚われたら危険。そう思わせる男なのだ。
「だけどね、今度の土曜日に迎えにくるって言うの」
「早速一緒に生活したいと、私にもお願いにきたよ」
和夫にまでしっかり手を回していたようだ。用意周到すぎて呆気にとられる。
「おじいちゃん、了承したの?」