政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~



「菜摘がいいと言えば、とね。でもね、お前が結婚したくないのなら私はそれで構わないと思ってるよ」
「だけどそれじゃ農園が」


経営は立ち行かなくなる。せっかく完成させたファインベリーも卸せなくなる。ないないづくしだ。


「それもまた運命(さだめ)だ。菜摘の気持ちがなによりも肝心だからね。大切な孫娘の心よりも守るべきものなんてこの世にない。借金返済はべつの方法を考えるから」
「おじいちゃん……」


理仁に相談はしたものの、あちらから結婚を条件に出されてしまい、和夫は和夫で悩ましいのだろう。
そんな気持ちを思うと、菜摘ももどかしくてたまらなくなる。


「だから菜摘は自分の思う通りの答えを出すといい。私はそれを受け止めるだけだ」


和夫はそう言って優しく笑った。


「そうだ、菜摘、プリン食べるか? 昨日、友達が見舞いに来て置いていったんだ。菜摘たちが来たら食べさせてあげてとね」


備えつけの冷蔵庫を指差し、開けて取ったらいいと和夫が言う。

扉を開けて取り出してみたら、ホイップされたクリームの上に小さなイチゴがのっていた。

結局、結論は菜摘の手中に舞い戻る。農園とイチゴの未来も、菜摘自身の未来も。
人生を揺るがす選択を前に、菜摘の心は大きく揺れていた。

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