政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
通い合う心


その夜、理仁が帰宅したのは午後九時を回った頃。美代子は夕食の準備をして帰ったため、菜摘ひとりで出迎えた。


「おかえりなさい」


いつもなら食事もお風呂も済ませ、互いにそれぞれの部屋で過ごしている時間。ふたりきりを強烈に意識するのは、理仁への気持ちを自覚したせいだろう。彼に「ただいま」と返されただけで猛烈に照れてしまう。


「あの、えっと……美代子さんはもう帰ったんです」
「九時回ってるもんな」


スリッパを履いてリビングへ向かう彼のうしろについていく。


「先にお風呂にしますか? それともご飯がいいですか?」


そう質問してから新婚みたいだと気づいて、ひとりで動揺する。いきなり立ち止まった理仁に気づかず、その背中にぶつかってしてしまった。肩から体当たりする格好だ。
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