政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

ものの十分でお風呂から上がった理仁が、ダイニングテーブルを見て唖然とする。


「なんだ、菜摘もまだ食べてなかったのか」


あたためなおしたふたり分の食事が、向かい合わせに置かれていたためだ。


「あまりお腹が減っていなかったんです」


昨日一日農園の手伝いをさせておいて、遅れを取り戻すべく仕事をしてきた理仁を待たずに食べるわけにはいかない。でも、それを正直に言って理仁に気にしてほしくなかった。

美代子が用意してくれたのは真鯛の煮つけに冬瓜のそぼろ煮といった純和食。いつもながら本当においしい。


「今朝、寝坊してごめんなさい」
「べつに謝らなくてもいいよ。疲れてただろうから」
「それは日高さんも同じです」
「体力には自信があるんだ。だから菜摘は心配しなくていい」


この家に来てからというもの、菜摘は嫌な気持ちにさせられたことが一度もない。良くしてもらういっぽうで、菜摘のイチゴに対する気持ちごと、すっぽり包み込まれている感覚がする。
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