政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「どうしてそんなに優しいんですか?」
気づいたらそう聞いていた。何度も態度や言葉で示されてきたから、菜摘もその訳は知っているはずなのに。
まだどこかで信じきれない気持ちもあるのか、もっと確実な言葉がほしいのか、自分でもあやふや。
理仁は一瞬ポカンとしてから食べ終えた箸を置く。微笑という言葉がぴったりの表情でテーブルに両肘を突き、その手を組んだ。
「どうしてかわからない?」
わかっているくせにというニュアンスを暗に含め、質問に質問で返してよこす。
菜摘がどう答えようか悩んでいるうちに、理仁はあっさり告げた。
「菜摘が好きだから」
茶化すわけでもなければ隠すわけでもないストレートな言葉に、菜摘の鼓動がトクンと弾む。
理仁はいつもそう。思っていることを正直に伝えてくれる。
(それなら私だって……)