政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

自分の気持ちを伝えるなら今。もう逃げてはいられない。理仁からもらうばかりじゃなく、素直な想いを自分の口から。

意を決して理仁を見つめる。スッと息を吸い――。


「私」


菜摘が口を開いた瞬間、テーブルに置いていた理仁のスマートフォンがヴヴヴと振動した。息を止め、ふたり同時にそれを見る。

静まらないところをみるとメールの受信ではなく電話。もしかしたら仕事絡みかもしれない。彼の顔がふと引きしまった。

ようやく決意したため、出鼻をくじかれてガッカリした気持ちになる。でも菜摘の都合で時間が回るわけではない。〝どうぞ〟と電話に出ても平気だと手で伝えた。


「ごめん」


ひと言断ってから理仁がテーブルから離れていく。
菜摘は張りつめていた空気を体から排出するようにふぅと息を吐いた。

(タイミング、逃しちゃったな……)

とはいっても理仁まで逃げるわけではない。明日でも明後日でも、また改めて言おうと考えなおした。
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