政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「自惚れでなければ、菜摘も俺と同じ気持ちだって伝わってくるんだけど」


ドキッとした。告白し損ねたのに、彼にはダダ洩れだったらしい。


「もしもそうなら、このまま唇をもらうけど」


いい?と囁いた吐息が唇にかかる。

もはや首を振るような状況ではなく、それ以上に菜摘が彼のキスを唇にほしかった。
もうどうにも誤魔化せない。彼を大好きでたまらないのだ。

答えるかわりに瞼を伏せた直後、やわらかな感触を唇に覚えた。
頬に添えていた手が菜摘の後頭部へ移動し、髪の中にそっと差し込む。もう片方の手は腰を引き寄せ、優しく抱き込んだ。

理仁と初めて唇を重ねたため体に力が入る。まるでストップモーションでもかけられたように時間が止まった感覚。そのくせ鼻息がかからないようにと静かに呼吸する、冷静な思考もわずかに残っていた。

控えめに重ね合わせていただけの唇を、理仁がやんわりと食んでほぐしていく。擦り合わせ、時折啄み、優しく優しく、決して急がないキスに高まる気持ちを止められない。
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