政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

軽々と菜摘を抱いて彼が向かったのは、昨夜まで彼がひとりで寝ていた寝室だった。

(つまりこれから日高さんと……? 嘘、どうしよう。そこまでの心の準備が……!)


「待ってくださいっ」
「そう言われて待つと思う?」


そうは思えないけれど引き留めずにはいられない。


「菜摘のゴーサインは行儀良く待ったつもりだけど?」
「……ゴーサイン」


キスを受け入れ、好きと告白したのがそうなのだろう。

繰り返した菜摘に、理仁が「そ」と口角を薄っすら上げる。妖艶とも言える目もとが菜摘の口を封じた。
広い寝室の大きなベッドに下ろされる。ピンと張りのあるシーツの上で体を起こそうとしたが、理仁に組み伏せられた。

顔の両脇で指を絡め、握られた手が熱い。
見下ろした理仁の眼差しも、まとう空気も、その色気に息が苦しくなる。水もないのに溺れてしまいそう。
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