政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

片方の手を解き、理仁が菜摘の髪を撫でる。愛しさを感じる手つきに胸がドキドキと張り詰めるのを止められない。
コツンと額を合わせ、視界が理仁でいっぱいになる。


「菜摘」


名前を呼ばれると同時に唇が重なった。

二度目は触れるだけで済まないと頭でわかっているのに、唇の隙間から舌が入ってくると自然に体が硬直する。それが理仁にも伝わったのか、いったん舌を引っ込めた。クスッと笑った彼の吐息がかかっただけで目眩を覚えてしまう。

キスは初めてじゃない。その先だって知っている。それなのにこんなにも緊張するのは、理仁が素敵すぎるせいだ。


「日高さん」


助けを求めるみたいに名前を呼んだら、理仁の目が三日月のように細くなった。


「あと少ししたら菜摘も日高だ。そろそろ下の名前で呼んでもいいんじゃないか?」


それもそうだ。結婚したら菜摘も日高になるのだから、いつまでも名字で呼んではいられない。
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