政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
両親を亡くして大地とここへやって来たばかりの頃は、慣れない生活に不安と寂しさばかり。祖父母に嫌われたら居場所がなくなる。農園の手伝いをするようになったのは、そんな強迫観念にとらわれたからだった。
収穫はもちろん、肥料を混ぜ合わせたり苗を植えたり。最初は嫌われないための手段でしかなかった手伝いが、次第に楽しくなったのは高校生の頃だった。自分で手をかけた苗が花を咲かせ、実を付ける。それが甘くおいしかったときの感動といったらなかった。
もっとイチゴについて学びたい。そんな想いが強くなり、菜摘が進学先に選んだのは大学の農学部。土いじりだけではなく、DNAなど化学的な側面からも学べたのは有意義なものだった。
その知識を和夫の農園でも生かせるよう、卒業してからも勉強の日々である。
和夫に励まされ、菜摘は「わかった」と強くうなずいた。