政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「この先は、おじい様にきちんと報告して入籍を済ませてからだな」
「理仁さんのご両親にもご挨拶しないといけませんよね」
「そうだね。どちらもなるべく早いうちにしよう」


結婚にむけて一つひとつ段階を踏んでいく理仁を見ていると、大事にされているのを実感する。
プロポーズはいきなりだったのに、菜摘の気持ちをなによりも大切にしてくれる人だからこそ惹かれたのかもしれない。

気遣いがうれしくて「ありがとうございます」と言ったが、理仁はなぜか不満そうな顔になる。
なんでかな?と疑問が浮かんだそばから、理仁の手が菜摘に伸びた。


「少しはガッカリしてくれ」
「――ふ、んっ」


不意打ちで鼻を軽く摘ままれ、決してかわいいとは言えない声が出る。手を放した理仁がクスッと笑うくらいだから、よほど変な声だったのだろう。


「ガッカリ……してます」


恥ずかしさを押し殺して素直に言った。そうできたのはたぶん想いをきちんと伝えたせい。理仁の顔を見られなかったのは許してほしい。
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