政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「そんなかわいいこと言うな」
「ひゃっ」
今度は肩先を掴まれベッドに押し倒された。両手は片手で拘束されて頭の上にひとまとめ。扇情的な瞳が菜摘を射抜く。
「ガッカリしろって……そう言ったのは理仁さんです」
「じゃ、嘘?」
言われたから言ったのかと聞かれ、首を横に振る。
理仁の目尻に笑みが浮かんだ。
「菜摘は煽るのが上手だな」
「煽ってなんて――」
否定の言葉が理仁の唇で喉の奥に押し戻される。重ね合わせるだけでストップしたのは、歯止めが効かなくなるのを抑えるためかもしれない。
すぐに解放した彼の唇が細い三日月のようになる。
「今夜からここで一緒にと思ったけど、菜摘が隣に寝てたら理性がもちそうにないな」
これまで公言通り唇にキスをしてこなかった理仁なら、鋼の理性の持ち主のように思えなくもないけれど。
理仁は苦笑いしながら菜摘を抱き起こし、額に情感を込めてキスをした。
「早いところおじい様のところに挨拶にいこう。これ以上、行儀良く待てそうにない」
その夜、菜摘は胸の高鳴りを持て余して、いつまでも眠れなかった。