政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
菜摘もその話をしようとして郁子と会う約束を取りつけていたため、ためらいもせず即答する。
「結婚しようと思ってる」
「そっか、そうだよね。さすがにいきなりは……って、え? 結婚? 決めたの!?」
ムースに夢中になっていて話半分だったのか、途中で菜摘の返答に気づいてパッと目線を上げる。切れ長の一重瞼をめいっぱい見開いて放った最後のひと言は、店内に響き渡った。
「そんなに驚かなくても……。郁子は大賛成だったじゃない」
つい不満を口にする。今すぐ嫁げ!くらいの勢いだったと言ってもいい。
「いや、そうなんだけどね。菜摘がこんなに早く決断するなんて思わないから」
菜摘自身も、そこは想定外である。
「やっぱり農園を守るため?」
「あぁうん……それもあるけど……」