政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

それが大きなきっかけになったのは間違いない。でも発端であって理由ではないと言いきれる。純粋に、彼のそばにいたい。そう思えたからだ。


「好きになった?」


テーブルに身を乗り出した郁子が鋭さを秘めながらも、にんまりとした目で菜摘を見つめる。
その視線に耐えられず、つい目を泳がせた。


「だよねー。あんなイイ男だもんねー。好きになっちゃうよねー」


韻を踏むかのごとく語尾を同じように伸ばす。郁子は首を交互に左右へ傾ける動作までつけた。


「それで結婚式は?」
「それはまだ決まってなくて。ひとまず先に入籍しようかって」


自分で言ったくせに入籍の言葉にドキドキする。おまけに昨夜、あわや……という事態まで発展したシーンを思い出して顔が熱い。濃厚なキスには白旗だった。

和夫が電話をかけてこなかったら、そのまま理仁と最後まで……。
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