政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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思いのほか楽しいクッキングタイムを経て完成したビーフシチューは、ふたりの想いも詰まってとてもおいしかった。美代子が用意してくれていたお馴染み、福ちゃんのパンも格別。ワインで入籍を祝い、料理を堪能し、先にお風呂を済ませた菜摘はいつもの自室で落ち着きなくソワソワしていた。
以前、入籍を済ませたら寝室は一緒と理仁が言っていたせいだ。
今日はっきりと明言されたわけではないが、美代子を早く帰らせてふたりきりの時間を作ったのを考えると理仁はきっとそのつもりだろう。
ドキドキと張り詰める心臓を宥めるべくスマートフォンでネットサーフィンしてみても、画面を目が滑るだけ。内容が頭になにも入ってこない。
部屋をノックされたのは、菜摘が諦めてスマートフォンをベッドに置いたときだった。
「菜摘、入るよ」
「は、はいっ」
あまりにも緊張していたため、鼓動と一緒に体が弾む。思わずピョンと立ち上がって両手を脇に揃えた。
「なんで直立不動?」
そんな様子を見た理仁が破顔する。